多感作用と誰が為の共感

萊草唳の創作雑記

唱歌「原爆の唄」

原子の欠片 水は燃え、躰は朽ちる 科学は名を貶し、悪意の徴 私は必死で拾い集めた 想いの欠片をただただ、 拾い集めた。 ようやっと科学の実は 科学の実は結実し 私は今ここに立ち 何をかを考える 犠牲になりし 命の咆哮は 嘆きの咆哮は 今では花の香に紛れ…

HIROSHIMA原文

広島に核爆弾が落とされた 水蒸気爆発とともに、 科学の知識の種があちらこちらにばら撒かれた 私はそれを必死で拾い集めた 開拓者の精神を以て、ただただ拾い集めた。 そうしていくうちに、 ようやっと科学の実は結実した。 私は今ここに立って何を考える …

いつでもどこでもおたすけスーパー

HELLOHOLLOW! 空っぽのスーパー このスーパーは24時間、開いている 哀しみを湛えたひとびとが吸い込まれていく あの人が好きだったもの、なんだっけね あの人がいつも食べていたもの、あゝ思い出した。 あの人との思い出でかごをいっぱいにして 泣き笑いに…

雪滲み入る、隣人愛の温かさ

雪が降っていた 凍えるような人々を縮こませる厳冬の雪 その中に、顔を雪まみれにしながら微笑む2人の姿があった。 白いドレスの女と、タキシード姿の男 この日じゃないといけないんです。 本当に、2人の記念日としては 天気のコンディションは最悪最低。 で…

白痴のふりをした男は無知蒙昧の夢を視る

彼は一家の傀儡として、銀行側に選ばれた人間だった。彼は識っていた、先代の党首が血桜の秘術によって、村長の子供に乗り移ったことを。 子供の出処は識っていた。 子供の名前は自分と同列。否、それ以上。 時貞が喪われた時を放つために使う器である。 名…

オパーリンの生命のスープ

オパーリン亭でランチを召し上がれ 品数は3つ、勿論どれもとびっきり 主役は勿論ロマネスコ フラクタル構造のニクいあいつ 1つめの料理はコバルト60でお化粧した これ以上芽も出ない、腐らない 完璧なロマネスコ その一房一房をぺきりと折って 一口サイズで…

もちずもうざむらい

はっけよいのこったのこった 東の横綱 角餅ざむらい 西の横綱 丸餅ざむらい あちあちの金網のうえでのしんけんしょうぶ 火かげんどうかい?ふくらんだ?ふくらんだ! ぱちぱち爆ぜる炭の音 ぷくっと膨らんだ表面には、努力のたんこぶ見え隠れ そこに醤油香る…

おおくのしまじま、うさぎ島

かつて地図から消し取られた島があった。 砂のけしゴムでざりざりと削られたその島には、 マスタードのガスが充満していた。 そこで働く人は、ようやく制服が着慣れたころの、 若い人たちばかりで 何を作っているのかも分からず ただ、言われるがままに作っ…

したをだしたいじん

かがくはちからだ、あっとうてきだ はがねのぼでぃにありったけのちからをつめこんで かがくはちからだ。あっ、とうてきだ すべてをおおいつくすよな、ねつのひかりがつつみこむ かがくはちからだ、あっとうてきだ すべてのちからをうばわれて、なめくじみた…

ちゃいろいおべんとう

おれはちゃいろいおべんとう 地味こそ滋味だ 心臓だけは真っ赤なプチトマトで出来ている いっしょうけんめいのなれの果て ふたが開けられるのをじっとまっている 腹時計のなる音に耳をすまして さあ今日も顔をほころばせて きみが口いっぱいほおばるのを眺め…

拝啓、旅をする木

アラスカのおおかみ ずっと眺めていた、海の向こう岸 ずっと眺めていたかった 切り立った崖に深く、深く切り刻まれたクレバスのむこう その先を見るなら、今しかない …そう、今しかないのだ 犬かきで冷たい海を泳ぐ その冷たさに思わず目が眩みそうになるが …

ここは銀河研究所

8000字を目標にして書いた話、選考は落ちたのでここに書き残すこととする。 59、58、57、56… おかしい、時計の針はちっとも早く動いてはくれない。しかめっ面でにらめっこ 「机のうえにひじをついちゃいけません、頬杖もダメ。」 ママはそういうのだけど、仕…

汝、悪辣を好まんとす-因果の小車によせて

蜘蛛の糸、という妖しきお伽噺があったそうな 最期の時、地獄に墜ちてゆく我が身を憂う時に、お釈迦様の御慈悲によって 選ばれた人間にだけ、与えたもう恩寵とも云われているのだった。 カンダタというのは、愚か者でせっかく選ばれた身だというのに当初の目…

連作群

白と灰色しろくつめたい壁の向こう側、カーテンを隔てて透明な人たちが横たわっている。静寂、ややあってパルス、また静寂。そのくりかえしーーー脆弱な、けれども静謐な不安の中で時を、ただ時を刻みつける。瞼を腫らした人たちが群れている。壁に佇む絵画…

黄金いろの並木

風吹き荒ぶ煉瓦道を僕は独り歩く。身体の芯まで凍えるような風だった。行き交う人は皆俯き加減で師走間近の喧騒を引き摺った、重たい空気がそこには在った。己の吐き出した呼気が澱んだ空気をさらに、澱んだものへと変えてゆく。荒れ狂う風は、その濁った空…

怪・智恵子抄

なさけない空のはなし 智恵子は東京には象徴が無いといふ。 ほんとの東京がみたいといふ。 私は驚いて行きかふ人たちを見る。 人いきれの中に在るのは 吹けば飛んでしまうよな繋がりの中で つめたくて、けれども綺麗な格好をした人たちだ 人生は一行のボオド…

OK、暴虐人はそれを喉から手が出るほど欲しているよ

指先一つで人が動く様を、この上ない悦びとするのか 人を突き動かすのは、「それ」を創り出すことへのこの上ない歓びだと云うのに ただ人を、その背後に隠したこの上ない恐怖をちらつかしさえすれば また巨万の富を得ることが出来ると嘯けば 人をどうとでも…

デイジーはきっと、答えない

ぼくのショートケーキにのったイチゴをそっとかのじょのお皿にのせてあげるようなそんなささやかな幸せを願っていたのに、ある日かのじょはこう言い放つと、ぼくの前からいなくなってしまった「あなたは、わたしのこと決して見てはくれなかった。…そんなあな…

ジンケンヒ、サクゲン

ある人がいた、 「サービス業務において最もコストを削減可能であるのは人件費だ、徹底的に削減しよう!」 かくしてある人物の立ち上げた会社は徹底的な時間管理の下で人を働かせるものとなった 「お客様は神様であり、また雇い主も神様である」というスロー…

靄のなか

電車に揺られている。本を開いて顔を伏せ、ただ字を目で追っている。直ぐに連なった電車は急な曲線にさしかかると、ぎしぎしと音を立てている。通路から見えていた景色が見えなくなる。トンネルを抜けると木の乏しいなんとも侘しい岩山がみえてくる、はずな…

Rules are running out

また、ルールが改訂されたのか もう夏かと思わせるほどの太陽が照りつける、光は新緑をじりじりと焼きつけいまにも融けてしまいそうだ。 街の電光掲示板や携帯型タブレットなどといったあらゆる情報ツールが同じ画面を表示する 「××年××日○時 ルールが変更さ…

ほしのにんぎょひめ エピローグ

僕は刑務所に来ていた、 というのは店主はまだここにいるらしいとの情報を得たからに 過ぎないのだけれども 彼がいわれの無い罪を問われ、今までこんな日々を過ごしているなんて知らなかった僕は、彼に会わずにはおれなかった 名前を告げ、面会の旨を告げる…

ほしのにんぎょひめ 透明な沈黙の中で

イデアは喋らない、だからこそ僕は喋り続ける「そして誰も居なくなった、」拳をぎゅっと握りしめて全ての感情を噛み殺しながら「ぼくはここに戻って来たのはつい最近で、ぼくだけが今ここに居るんだ」彼等の不在がなんてことのなかったかのように街は機能し…

ほしのにんぎょひめ どうくつのイデア

細波が引いてぼくは手に持っていた本を静かに閉じた 寄せては打ち返す波のただ中に居てただ一つ変わらない松明の灯を眺めていた そんな中でぼくは、彼女に出会った 鈍く光る彼女の姿は話しに聞いていた人魚の姿かたちとは異なっていた ぼくは彼女が話が出来…

ほしのにんぎょひめ 人魚の瞳

草食動物の眼は外敵をなるべく早い段階から視界に捉えられるように平行に位置している 肉食動物の眼は獲物に最期の一撃を与えられるように中心に位置し、立体視が出来るようになっている 眼が捉えるのは三次元世界を二次元に還元した像であるが それを奥行き…

ほしのにんぎょひめ 蒼眠る

「お前さえ来なければ 疑われる事はなかったのに どうして酒場なんかに来た」 いきなり腕を掴まれたかと思ったら第一声がこれだった 「てめぇ…」 ぼくは何の事か分からずただ、その場で立ち尽くしていた 「俺は何もやってないんだ 何も、…そうおどけてみせた…

其の猫はただ一度限りの生を生きた

我輩は猫である。名前というものを知らない否、名前というものがあってはならないのだ或る猫はこう言うのだ「帰る場所があるというのは良いものだ、君はなんとも可哀想なもんだね日がな一日其処で暮らさずとも頃合いを見計らって戻れば家の主に歓迎されるの…

ほしのにんぎょひめ 三重点

とある痕跡を探す為ぼくは祠のある崖の上に来ていた岩に激しく波がぶつかって飛沫を上げながら寄せては返しを繰り返してる微かな塩の匂いとそして松明が焼けた燻した匂いが綯い交ぜになって吹き荒ぶ風をより一層物悲しいものとしていたのだったこの土地は日…

ほしのにんぎょひめ fight or flight

「お前か、なあ、お前だったんだろ 伝承にあった巫女っていうのは 何が望みなんだ」松明はすぐに灯されたが儀式が失敗に終わったのはこれが初めてだった外で踊りを供していた人達も気にするなと言ってはくれるもののどこか笑顔が引きつっているのだった茫然…

ほしのにんぎょひめ 紅穿つ

晒し去らせや曼珠沙華 しほたる雫に来しむ声 晒し晒せど尽きもせず 酔いも巡る宵闇の 其処彼処に帰し方来方 あれ見やるに畝掘り田掘り 死をやる涙はせんかたなく 紅拡がりて見知らぬ気色 拓けや拓け 興せや興せ しほたる雫は一時なりやと 声聞こえる 拓けや…