ぷいぷい館の殺人

……そして、モルカーたちの渋滞はより一層の混迷を迎えようとしていた。 モルカーたちの連なりが徐々に増えはじめた。 時計を見るニンゲンの表情はわずかに曇りはじめている。 モルカーたちはモルモットのくるまである。モルカーたちは日々ニンゲンたちに可愛…

おおくのしまじま、うさぎ島

かつて地図から消し取られた島があった。 砂のけしゴムでざりざりと削られたその島には、 マスタードのガスが充満していた。 そこで働く人は、ようやく制服が着慣れたころの、 若い人たちばかりで 何を作っているのかも分からず ただ、言われるがままに作っ…

したをだしたいじん

かがくはちからだ、あっとうてきだ はがねのぼでぃにありったけのちからをつめこんで かがくはちからだ。あっ、とうてきだ すべてをおおいつくすよな、ねつのひかりがつつみこむ かがくはちからだ、あっとうてきだ すべてのちからをうばわれて、なめくじみた…

ちゃいろいおべんとう

おれはちゃいろいおべんとう 地味こそ滋味だ 心臓だけは真っ赤なプチトマトで出来ている いっしょうけんめいのなれの果て ふたが開けられるのをじっとまっている 腹時計のなる音に耳をすまして さあ今日も顔をほころばせて きみが口いっぱいほおばるのを眺め…

拝啓、旅をする木

アラスカのおおかみ ずっと眺めていた、海の向こう岸 ずっと眺めていたかった 切り立った崖に深く、深く切り刻まれたクレバスのむこう その先を見るなら、今しかない …そう、今しかないのだ 犬かきで冷たい海を泳ぐ その冷たさに思わず目が眩みそうになるが …

シノアリス二次創作「グレーテルくんと時間ウサギ」

「…時間!…時間!!…時間だーッッッ皆ー!起きてるかーッッッ!?!?」 クロックラビットはいつも時間に厳しい。 とは言うものの、口を酸っぱくして言い含めないと他のギルメンの出席率は半減、ギルドマスターである[時を駆ける公僕]のアリスはもう匙を投げ…

箱庭の回旋曲 op.1

※ファミ通文庫版 『彗星のガルガンティア』各巻 ニトロプラス版 『彗星のガルガンティア 少年と巨人』 の設定に準拠しています。また本編に関する重要なネタバレも含まれています。 理性と本能の抗争という印象を受けたので、レドが漂着したガルガンディアが…

ここは銀河研究所

8000字を目標にして書いた話、選考は落ちたのでここに書き残すこととする。 59、58、57、56… おかしい、時計の針はちっとも早く動いてはくれない。しかめっ面でにらめっこ 「机のうえにひじをついちゃいけません、頬杖もダメ。」 ママはそういうのだけど、仕…

汝、悪辣を好まんとす-因果の小車によせて

蜘蛛の糸、という妖しきお伽噺があったそうな 最期の時、地獄に墜ちてゆく我が身を憂う時に、お釈迦様の御慈悲によって 選ばれた人間にだけ、与えたもう恩寵とも云われているのだった。 カンダタというのは、愚か者でせっかく選ばれた身だというのに当初の目…

連作群

白と灰色しろくつめたい壁の向こう側、カーテンを隔てて透明な人たちが横たわっている。静寂、ややあってパルス、また静寂。そのくりかえしーーー脆弱な、けれども静謐な不安の中で時を、ただ時を刻みつける。瞼を腫らした人たちが群れている。壁に佇む絵画…

黄金いろの並木

風吹き荒ぶ煉瓦道を僕は独り歩く。身体の芯まで凍えるような風だった。行き交う人は皆俯き加減で師走間近の喧騒を引き摺った、重たい空気がそこには在った。己の吐き出した呼気が澱んだ空気をさらに、澱んだものへと変えてゆく。荒れ狂う風は、その濁った空…

怪・智恵子抄

なさけない空のはなし 智恵子は東京には象徴が無いといふ。 ほんとの東京がみたいといふ。 私は驚いて行きかふ人たちを見る。 人いきれの中に在るのは 吹けば飛んでしまうよな繋がりの中で つめたくて、けれども綺麗な格好をした人たちだ 人生は一行のボオド…

OK、暴虐人はそれを喉から手が出るほど欲しているよ

指先一つで人が動く様を、この上ない悦びとするのか 人を突き動かすのは、「それ」を創り出すことへのこの上ない歓びだと云うのに ただ人を、その背後に隠したこの上ない恐怖をちらつかしさえすれば また巨万の富を得ることが出来ると嘯けば 人をどうとでも…

デイジーはきっと、答えない

ぼくのショートケーキにのったイチゴをそっとかのじょのお皿にのせてあげるようなそんなささやかな幸せを願っていたのに、ある日かのじょはこう言い放つと、ぼくの前からいなくなってしまった「あなたは、わたしのこと決して見てはくれなかった。…そんなあな…

ジンケンヒ、サクゲン

ある人がいた、 「サービス業務において最もコストを削減可能であるのは人件費だ、徹底的に削減しよう!」 かくしてある人物の立ち上げた会社は徹底的な時間管理の下で人を働かせるものとなった 「お客様は神様であり、また雇い主も神様である」というスロー…

靄のなか

電車に揺られている。本を開いて顔を伏せ、ただ字を目で追っている。直ぐに連なった電車は急な曲線にさしかかると、ぎしぎしと音を立てている。通路から見えていた景色が見えなくなる。トンネルを抜けると木の乏しいなんとも侘しい岩山がみえてくる、はずな…

Rules are running out

また、ルールが改訂されたのか もう夏かと思わせるほどの太陽が照りつける、光は新緑をじりじりと焼きつけいまにも融けてしまいそうだ。 街の電光掲示板や携帯型タブレットなどといったあらゆる情報ツールが同じ画面を表示する 「××年××日○時 ルールが変更さ…

ほしのにんぎょひめ エピローグ

僕は刑務所に来ていた、 というのは店主はまだここにいるらしいとの情報を得たからに 過ぎないのだけれども 彼がいわれの無い罪を問われ、今までこんな日々を過ごしているなんて知らなかった僕は、彼に会わずにはおれなかった 名前を告げ、面会の旨を告げる…

ほしのにんぎょひめ 透明な沈黙の中で

イデアは喋らない、だからこそ僕は喋り続ける「そして誰も居なくなった、」拳をぎゅっと握りしめて全ての感情を噛み殺しながら「ぼくはここに戻って来たのはつい最近で、ぼくだけが今ここに居るんだ」彼等の不在がなんてことのなかったかのように街は機能し…

ほしのにんぎょひめ どうくつのイデア

細波が引いてぼくは手に持っていた本を静かに閉じた 寄せては打ち返す波のただ中に居てただ一つ変わらない松明の灯を眺めていた そんな中でぼくは、彼女に出会った 鈍く光る彼女の姿は話しに聞いていた人魚の姿かたちとは異なっていた ぼくは彼女が話が出来…

ほしのにんぎょひめ 人魚の瞳

草食動物の眼は外敵をなるべく早い段階から視界に捉えられるように平行に位置している 肉食動物の眼は獲物に最期の一撃を与えられるように中心に位置し、立体視が出来るようになっている 眼が捉えるのは三次元世界を二次元に還元した像であるが それを奥行き…

ほしのにんぎょひめ 蒼眠る

「お前さえ来なければ 疑われる事はなかったのに どうして酒場なんかに来た」 いきなり腕を掴まれたかと思ったら第一声がこれだった 「てめぇ…」 ぼくは何の事か分からずただ、その場で立ち尽くしていた 「俺は何もやってないんだ 何も、…そうおどけてみせた…

其の猫はただ一度限りの生を生きた

我輩は猫である。名前というものを知らない否、名前というものがあってはならないのだ或る猫はこう言うのだ「帰る場所があるというのは良いものだ、君はなんとも可哀想なもんだね日がな一日其処で暮らさずとも頃合いを見計らって戻れば家の主に歓迎されるの…

ほしのにんぎょひめ 三重点

とある痕跡を探す為ぼくは祠のある崖の上に来ていた岩に激しく波がぶつかって飛沫を上げながら寄せては返しを繰り返してる微かな塩の匂いとそして松明が焼けた燻した匂いが綯い交ぜになって吹き荒ぶ風をより一層物悲しいものとしていたのだったこの土地は日…

ほしのにんぎょひめ fight or flight

「お前か、なあ、お前だったんだろ 伝承にあった巫女っていうのは 何が望みなんだ」松明はすぐに灯されたが儀式が失敗に終わったのはこれが初めてだった外で踊りを供していた人達も気にするなと言ってはくれるもののどこか笑顔が引きつっているのだった茫然…

ほしのにんぎょひめ 紅穿つ

晒し去らせや曼珠沙華 しほたる雫に来しむ声 晒し晒せど尽きもせず 酔いも巡る宵闇の 其処彼処に帰し方来方 あれ見やるに畝掘り田掘り 死をやる涙はせんかたなく 紅拡がりて見知らぬ気色 拓けや拓け 興せや興せ しほたる雫は一時なりやと 声聞こえる 拓けや…

ほしのにんぎょひめ 泡となった少女

何事にも犠牲が必要なのだと皆は云う 祭事の取り決まりにより 巫女となってこの身を神に捧げよ、それで丸く納まるのだと 皆は云う この役目は光栄な事だと、 素晴らしい事だと羨望な眼差しを向ける人がいる一方で 毎日この神殿を訪れる人の中には 己が娘にそ…

コエラカントゥスは眠ったまま、やがて宇宙の夢をみる

コエラカントゥスは喋らない 外の世界の事を誰よりも知っているのに コエラカントゥスはいつも物憂げである しろくにごったその眼からは表情を読み取ることも難しい ただ、困った事があると皆は決まってコエラカントゥスの所へ行って 教えを請いにいくのが習…

ほしのにんぎょひめ 存在しない筈の本

或る星売りのおはなし 「この街の伝承をしっているだろうか? まあ、この街に来たばかりなら知らないだろう。こっちへ来て座ると良い。 いやあ、君はなんとも運が良いよ、驚異的な運の良さ って言ってもいいくらいだ。 まあ人魚姫の涙ってのは… お?気になる…

ほしのにんぎょひめ Schön war,das ich dir weihte

レコードに針を落としてそっと目を閉じる 瞼の裏に映る思い出を頼りにして あの時の甘美なひとときを思い起こすのだ お前は美しかった 白いワンピースを着ていたお前が優しく微笑んで私の手を取るのを ただ、見ていた そして お前はいつしか病に倒れることと…