瓦乍籠の詭弁録

喃多哩 唖里玖の創作雑記

2013-01-01から1年間の記事一覧

Rules are running out

また、ルールが改訂されたのか もう夏かと思わせるほどの太陽が照りつける、光は新緑をじりじりと焼きつけいまにも融けてしまいそうだ。 街の電光掲示板や携帯型タブレットなどといったあらゆる情報ツールが同じ画面を表示する 「××年××日○時 ルールが変更さ…

ほしのにんぎょひめ エピローグ

僕は刑務所に来ていた、 というのは店主はまだここにいるらしいとの情報を得たからに 過ぎないのだけれども 彼がいわれの無い罪を問われ、今までこんな日々を過ごしているなんて知らなかった僕は、彼に会わずにはおれなかった 名前を告げ、面会の旨を告げる…

ほしのにんぎょひめ 透明な沈黙の中で

イデアは喋らない、だからこそ僕は喋り続ける「そして誰も居なくなった、」拳をぎゅっと握りしめて全ての感情を噛み殺しながら「ぼくはここに戻って来たのはつい最近で、ぼくだけが今ここに居るんだ」彼等の不在がなんてことのなかったかのように街は機能し…

ほしのにんぎょひめ どうくつのイデア

細波が引いてぼくは手に持っていた本を静かに閉じた 寄せては打ち返す波のただ中に居てただ一つ変わらない松明の灯を眺めていた そんな中でぼくは、彼女に出会った 鈍く光る彼女の姿は話しに聞いていた人魚の姿かたちとは異なっていた ぼくは彼女が話が出来…

ほしのにんぎょひめ 人魚の瞳

草食動物の眼は外敵をなるべく早い段階から視界に捉えられるように平行に位置している 肉食動物の眼は獲物に最期の一撃を与えられるように中心に位置し、立体視が出来るようになっている 眼が捉えるのは三次元世界を二次元に還元した像であるが それを奥行き…

ほしのにんぎょひめ 蒼眠る

「お前さえ来なければ 疑われる事はなかったのに どうして酒場なんかに来た」 いきなり腕を掴まれたかと思ったら第一声がこれだった 「てめぇ…」 ぼくは何の事か分からずただ、その場で立ち尽くしていた 「俺は何もやってないんだ 何も、…そうおどけてみせた…

其の猫はただ一度限りの生を生きた

我輩は猫である。名前というものを知らない否、名前というものがあってはならないのだ或る猫はこう言うのだ「帰る場所があるというのは良いものだ、君はなんとも可哀想なもんだね日がな一日其処で暮らさずとも頃合いを見計らって戻れば家の主に歓迎されるの…

ほしのにんぎょひめ 三重点

とある痕跡を探す為ぼくは祠のある崖の上に来ていた岩に激しく波がぶつかって飛沫を上げながら寄せては返しを繰り返してる微かな塩の匂いとそして松明が焼けた燻した匂いが綯い交ぜになって吹き荒ぶ風をより一層物悲しいものとしていたのだったこの土地は日…

ほしのにんぎょひめ fight or flight

「お前か、なあ、お前だったんだろ 伝承にあった巫女っていうのは 何が望みなんだ」松明はすぐに灯されたが儀式が失敗に終わったのはこれが初めてだった外で踊りを供していた人達も気にするなと言ってはくれるもののどこか笑顔が引きつっているのだった茫然…

ほしのにんぎょひめ 紅穿つ

晒し去らせや曼珠沙華 しほたる雫に来しむ声 晒し晒せど尽きもせず 酔いも巡る宵闇の 其処彼処に帰し方来方 あれ見やるに畝掘り田掘り 死をやる涙はせんかたなく 紅拡がりて見知らぬ気色 拓けや拓け 興せや興せ しほたる雫は一時なりやと 声聞こえる 拓けや…

ほしのにんぎょひめ 泡となった少女

何事にも犠牲が必要なのだと皆は云う 祭事の取り決まりにより 巫女となってこの身を神に捧げよ、それで丸く納まるのだと 皆は云う この役目は光栄な事だと、 素晴らしい事だと羨望な眼差しを向ける人がいる一方で 毎日この神殿を訪れる人の中には 己が娘にそ…

コエラカントゥスは眠ったまま、やがて宇宙の夢をみる

コエラカントゥスは喋らない 外の世界の事を誰よりも知っているのに コエラカントゥスはいつも物憂げである しろくにごったその眼からは表情を読み取ることも難しい ただ、困った事があると皆は決まってコエラカントゥスの所へ行って 教えを請いにいくのが習…

ほしのにんぎょひめ 存在しない筈の本

或る星売りのおはなし 「この街の伝承をしっているだろうか? まあ、この街に来たばかりなら知らないだろう。こっちへ来て座ると良い。 いやあ、君はなんとも運が良いよ、驚異的な運の良さ って言ってもいいくらいだ。 まあ人魚姫の涙ってのは… お?気になる…

ほしのにんぎょひめ Schön war,das ich dir weihte

レコードに針を落としてそっと目を閉じる 瞼の裏に映る思い出を頼りにして あの時の甘美なひとときを思い起こすのだ お前は美しかった 白いワンピースを着ていたお前が優しく微笑んで私の手を取るのを ただ、見ていた そして お前はいつしか病に倒れることと…