レコードに針を落としてそっと目を閉じる
瞼の裏に映る思い出を頼りにして
あの時の甘美なひとときを思い起こすのだ
お前は美しかった
白いワンピースを着ていたお前が優しく微笑んで私の手を取るのを
ただ、見ていた
そして
お前はいつしか病に倒れることとなった
病室で静かに微笑むその姿は
ああ、元気そうな素振りを見せてはいるがお前が病室でひとしきり泣いているのを
私は知っているのだ。
私は必死だった
ある日は
「君の為に図書館を作ろう、とびきりのを」
そして、ある日は
「家も造らせた、どうだね」
その度にお前はただ悲しげに頭を振って微笑むのだった
私には分からない
お前が望んでいた事が
私には分かっていた
いくら建物を建てたとて、それが上手くいく筈がないということが
私は気付いていた
建物を建てると言った時に周りに居た者達の中に…
私はもう無力だった
抗えない流れの中に、居た