父は何か懸念事があると決まってレコードに針を落とす
今日は、
を、
頑迷そのものである父が好む音楽はどこか華やかで
そして楽しげである
聞く曲は父がいつも選ぶが、曲をかけるのはいつも決まって私である、
かつては母のやっていた仕事であった。
私は与えられた仕事をただ、いつものように繰り返すだけ
父はというと
まるで、何かを思い出すかのようにじっと瞼を閉じて
ただ聞いているのであった
豪華な作りの図書館は彼が命じて作らせたものであった
辺りにある家は、住む人がいないまま随分時が経ってしまった。
酒場だけがただ、賑やかであった。
「…今日もまた何処かに行くのか」
「…はい」
父に対するささやかな抵抗である。
行先は告げない。
「…今年の御神酒の準備は」
父はいつも仕事の事しか聞いてこない
「…滞りなく。」
それさえ守れば十分なのだ。…きっと。