ハヤカワに出す
アブサンのボトルは銀の盆に載っていて隣には切り細工の装飾の施された入り口は広くそこから細長くなっていって下方が少し風船状に膨らんだ専用のグラスと小さなココット皿に入った紅茶用の角ばった砂糖の塊と、ジッポーライターと銀製のこれまた美しい装飾…
「人魚姫の伝説を聞いてこの町にやってきたのでもなくただこの酒場に来たのなら、残された理由は酒好きだって事ぐらい。となるとこれほど歓迎に値する理由はないからな、何か飲めよ。人魚姫の伝説目当てでくるやつに飽き飽きしてたところだ。」 と静かにグラ…
よく見れば酒宴のテーブルは六人掛けのテーブルの筈なのに反対側の席が全て空いている。所狭しと料理や空き瓶が並んでいるのに、どこか不自然だ。 そこに座るのはおそらく… だとしたら、成る程この町の規模のわりに酒場がこんなにも立派な店構えをしているの…
「おっ見かけない顔だな」 _______声をかけられた瞬間ぼくはしまった、と思った 旅慣れてはいるものの精悍さからは程遠い体つきのぼくはよくこう声を掛けられては人目のつかない路地へと無理やり連れて行かれそうになるのだった。あまりにもそのよう…
星の産まれる声が聞きたくてそっと始める。ポケットから瓶を、買ってきたばかりのグラスをそれぞれことりと置いてはやる気持ちを必死に抑え、深呼吸をひとつして。 海を泳ぐ人魚が何故、と一言だけつぶやいて流した涙が真珠になってそれをグラスに入れて炭酸…