伝承に対する信憑性を維持するという名の下暗黙の了解として進められてきたとある風習を
ぼくはその日まで知らなかった
かつてのぼくは寂れた街に、そして何よりここに住むおとなたちに侮蔑的な感情を持っていて
酒は身体に悪いから、脳の発育を遅らせるからという文句で幾らでも言葉の刃を突き付けてくる「正しく、善良な」おとなに飽き飽きしていたぼくらは
街で唯一の酒場に足しげく通っては
店主の暗黙の了解の下 日ごと酒宴を行っていたものだった
ぼくは単純に自分が飲酒により酔った状態がどのようなものになるか想像もつかず
そんな醜態を晒した後でまた再び宴に耽るだけの強さを持たなかったので酒を嗜むことに断固拒否していたが
ぼくを大人として扱ってくれる
あの店主だけはぼくを導いてくれる唯一の「大人」として崇拝していたのであった。
さて、今あの酒場にいる店主は誰だったのだろう
かつての懐かしい記憶と混同してしまったぼくの失態はさておき
あの店主の顔は暗がりでよく分からなかったが
もしかすると、いや