多感作用と誰が為の共感

萊草唳の創作雑記

ほしのにんぎょひめ 9項

酒場の雰囲気はなごやかそのもので

ぼくが図書館に所蔵されているという本に興味を持つのも当然のことだった。

だが、それらしい本は見当たらないばかりか

司書の人に聞いてみてもそのような本は存在しない、の一点張りでまともに取り合ってはくれないのだった。

ふと思いたち小瓶にいれたままのアブサンの匂いを嗅ぐ、苦みのつよい

なんともかなしいあじがした。

かつて、この安酒に耽溺しながら数々の名作を世に出したかの有名な芸術家たちにとって、作品とは己の免罪符だったのか

筆致に願望が、感情が蠢くのである

それはまるで燻り続けながらも異彩な光を放つ蝋燭の様な、そんな意匠をもって語りかけてくるのである

ぼくは、本を読み続ける

形跡を辿る為に、そして間隙を埋め、所在なき空虚な感情を満たす為に

 

 

ぼくのかつての居場所はそこにあったのだと気付かされるまで