連作群

白と灰色

しろくつめたい壁の向こう側、カーテンを隔てて
透明な人たちが横たわっている。

静寂、ややあってパルス、また静寂。そのくりかえし

ーーー脆弱な、けれども静謐な不安の中で時を、ただ時を刻みつける。
瞼を腫らした人たちが群れている。
壁に佇む絵画の光は、人々の心を照らすこともなく
ただ、壁の染みのような、ひと拭いで消え去ってしまうかのよな
ちらちらとした灯りであった。
人は人を呪うのだ、時に人は静謐を求めるのだ。
しかし、ただ不安のままに囁く人の声は
願いを繰り返すばかりで、手をこまねく灰色の亜の群像に掻き消えゆくのだった。

微弱、ややあってパルス、バイタルサインの徴

人びとは、安堵の溜め息を漏らし、散り散りになってもとの群像へと姿を変える。

時折耳を劈くかのような咆哮があってひとたびの静寂を乱すのだが
その繰り返しのただ中に、亜の人びとはいて、
時に祈り、時に天を仰ぐなどしている。けれども、何事もなかったかのように亜の人びとは散り散りになって、
ただの宴だったのかと酷く落胆するばかりだった。
穿たんばかりの、かの思いはアスファルトの染みとなり、ただいっさいを吸い込んでゆく。
水浸しになった紙切れが、嘆いているよ、グレーの涙をはらはらと流しているよ。

習作 8月によせて

赤錆の 姿留めし 人の影
  あの日の記憶 千々と消え逝く

日喰む雲 見上げ零るる 黒い雨
           枯れ木となりし 腑に染みいる

肺腑を屠る 洋芥子(マスタード)瓦斯
                   黒壁の名残り 消えぬ足跡 

壁穿ち 姿留めし  ドーム館(だて)
  黙(しじま)にあわぬ ファズヴォイス 

鳩舞う空を 仰ぎ見ゆ
  夾竹桃  知られずとも 花はまた咲く

既に七十過ぎ去りて
行き交ふ人の  
黒の黒さを、白の白きを