黄金いろの並木

風吹き荒ぶ煉瓦道を僕は独り歩く。
身体の芯まで凍えるような風だった。行き交う人は皆俯き加減で
師走間近の喧騒を引き摺った、重たい空気がそこには在った。
己の吐き出した呼気が澱んだ空気をさらに、澱んだものへと変えてゆく。荒れ狂う風は、その濁った空気を決して何処かへと連れ去ってはくれず、ただ人びとを縮こませるだけの、つめたい風であった。

僕はというと、空っぽの瓶を手に持っていた。
甘やかな香りを放つそれに、僕は抗うことが出来ないでいた。
空っぽになってしまったことは分かるのだが、いつから空っぽなのか、それは何時迄も僕に付き纏う永遠の謎であった。僕は、ただ歩き続けることしか出来ないでいた。
じくじくと足が傷むのも構わず、彷徨い続けていたのだった。
ふと見上げると黄金いろの樹々が、はらはらとその一ひら、一ひらを落としていた。
そのふかふかとした、けれども少しくすんだ小高い丘のようなところに、点々と小さく丸い何かが見える
僕はあえて近づいて、きっ、と鼻につくそれを眼に捉える。
しわがれた、饐えた臭いのするその実を足で潰す。ただ足の平で潰す。
堕落の証だ、腐敗の徴だ、
潰していくうちに、翡翠いろの何かが見える、でも僕はそれを綺麗だとは、とてもじゃないが、思えない。
ただ哀しくなるのだ、
やがて眩暈するかのような心地がして、
己の腹からようやっと出したものは、
酷く饐えた臭いがした。
僕の哀しみと引き換えに、生み出されたのは、
ただただ醜い、それだった。