「お前さえ来なければ 疑われる事はなかったのに
どうして酒場なんかに来た」
いきなり腕を掴まれたかと思ったら第一声がこれだった
「てめぇ…」
ぼくは何の事か分からずただ、その場で立ち尽くしていた
「俺は何もやってないんだ
何も、…そうおどけてみせたのにあいつらは信じちゃいない。
なのに今俺はこうして疑われて、挙句警察に知られたのはお前のせいだと、云うんだ」
「俺はただ、客を選んで祠に連れてくだけ、それだけでいいって言われ続けてやってただけだ
見ろよ、酒場に屯してたあいつらの顔を!!
なんてことのないただの腑抜けだと思っていたが
あいつらより、俺のやってた仕事が大したことないって知った時は絶望したね!!
あんなやつらの足元にも及ばないのかっていうのか、俺は、、
おしまいだ!!」
感情が高ぶっていて誰かとぼくを勘違いしているその男は
確かに、死んだ筈の男だった。
「おい…お前らそこで何をしている」
そして次に来たこの男もぼくの知っている…いや二人とも良く知った顔だった
ぼくは何を見ているんだ?
二人が死ぬ前の光景を?
「お前もか、お前いっつも酒場で斜に構えているけど
俺の事を見下してるんだろ!?そうやって、、
余裕そうな表情で
お前のせいだ!お前さえ居なければ俺は…俺は!!」
あ、と思った時にはもう遅かった
もつれた二人の身体は崖から真っ逆さまに落ちていった
ふつふつと湧き立つ泡はやがて色を帯びて鮮やかな藍色へと変貌する
意識が、波に融けた