「人魚姫の伝説を聞いてこの町にやってきたのでもなくただこの酒場に来たのなら、残された理由は酒好きだって事ぐらい。となるとこれほど歓迎に値する理由はないからな、何か飲めよ。人魚姫の伝説目当てでくるやつに飽き飽きしてたところだ。」
と静かにグラスを掲げながら言うのだった。
話が分かるひとたちで良かった、どうやらこれ以上要らぬ心配をする必要はなさそうだ。
ぼくは店内に飾られたボトルを一頻り眺めたあと、お目当ての酒があったので頬を緩ませながらこういった
「アブサンを、一つ」
「もっと軽いものを頼むだろうと思ってたよ、やられた」
「この酒場にやってくる客の凡そ全ての難題に応えるのがこの店のポリシーだからな、勿論あるよ。
選りすぐりのが」