ここは銀河研究所

8000字を目標にして書いた話、選考は落ちたのでここに書き残すこととする。 59、58、57、56… おかしい、時計の針はちっとも早く動いてはくれない。しかめっ面でにらめっこ 「机のうえにひじをついちゃいけません、頬杖もダメ。」 ママはそういうのだけど、仕…

汝、悪辣を好まんとす-因果の小車によせて

蜘蛛の糸、という妖しきお伽噺があったそうな 最期の時、地獄に墜ちてゆく我が身を憂う時に、お釈迦様の御慈悲によって 選ばれた人間にだけ、与えたもう恩寵とも云われているのだった。 カンダタというのは、愚か者でせっかく選ばれた身だというのに当初の目…

連作群

白と灰色しろくつめたい壁の向こう側、カーテンを隔てて透明な人たちが横たわっている。静寂、ややあってパルス、また静寂。そのくりかえしーーー脆弱な、けれども静謐な不安の中で時を、ただ時を刻みつける。瞼を腫らした人たちが群れている。壁に佇む絵画…

黄金いろの並木

風吹き荒ぶ煉瓦道を僕は独り歩く。身体の芯まで凍えるような風だった。行き交う人は皆俯き加減で師走間近の喧騒を引き摺った、重たい空気がそこには在った。己の吐き出した呼気が澱んだ空気をさらに、澱んだものへと変えてゆく。荒れ狂う風は、その濁った空…

怪・智恵子抄

なさけない空のはなし 智恵子は東京には象徴が無いといふ。 ほんとの東京がみたいといふ。 私は驚いて行きかふ人たちを見る。 人いきれの中に在るのは 吹けば飛んでしまうよな繋がりの中で つめたくて、けれども綺麗な格好をした人たちだ 人生は一行のボオド…

OK、暴虐人はそれを喉から手が出るほど欲しているよ

指先一つで人が動く様を、この上ない悦びとするのか 人を突き動かすのは、「それ」を創り出すことへのこの上ない歓びだと云うのに ただ人を、その背後に隠したこの上ない恐怖をちらつかしさえすれば また巨万の富を得ることが出来ると嘯けば 人をどうとでも…

デイジーはきっと、答えない

ぼくのショートケーキにのったイチゴをそっとかのじょのお皿にのせてあげるようなそんなささやかな幸せを願っていたのに、ある日かのじょはこう言い放つと、ぼくの前からいなくなってしまった「あなたは、わたしのこと決して見てはくれなかった。…そんなあな…

ジンケンヒ、サクゲン

ある人がいた、 「サービス業務において最もコストを削減可能であるのは人件費だ、徹底的に削減しよう!」 かくしてある人物の立ち上げた会社は徹底的な時間管理の下で人を働かせるものとなった 「お客様は神様であり、また雇い主も神様である」というスロー…

靄のなか

電車に揺られている。本を開いて顔を伏せ、ただ字を目で追っている。直ぐに連なった電車は急な曲線にさしかかると、ぎしぎしと音を立てている。通路から見えていた景色が見えなくなる。トンネルを抜けると木の乏しいなんとも侘しい岩山がみえてくる、はずな…

Rules are running out

また、ルールが改訂されたのか もう夏かと思わせるほどの太陽が照りつける、光は新緑をじりじりと焼きつけいまにも融けてしまいそうだ。 街の電光掲示板や携帯型タブレットなどといったあらゆる情報ツールが同じ画面を表示する 「××年××日○時 ルールが変更さ…

ほしのにんぎょひめ エピローグ

僕は刑務所に来ていた、 というのは店主はまだここにいるらしいとの情報を得たからに 過ぎないのだけれども 彼がいわれの無い罪を問われ、今までこんな日々を過ごしているなんて知らなかった僕は、彼に会わずにはおれなかった 名前を告げ、面会の旨を告げる…

ほしのにんぎょひめ 透明な沈黙の中で

イデアは喋らない、だからこそ僕は喋り続ける「そして誰も居なくなった、」拳をぎゅっと握りしめて全ての感情を噛み殺しながら「ぼくはここに戻って来たのはつい最近で、ぼくだけが今ここに居るんだ」彼等の不在がなんてことのなかったかのように街は機能し…

ほしのにんぎょひめ どうくつのイデア

細波が引いてぼくは手に持っていた本を静かに閉じた 寄せては打ち返す波のただ中に居てただ一つ変わらない松明の灯を眺めていた そんな中でぼくは、彼女に出会った 鈍く光る彼女の姿は話しに聞いていた人魚の姿かたちとは異なっていた ぼくは彼女が話が出来…

ほしのにんぎょひめ 人魚の瞳

草食動物の眼は外敵をなるべく早い段階から視界に捉えられるように平行に位置している 肉食動物の眼は獲物に最期の一撃を与えられるように中心に位置し、立体視が出来るようになっている 眼が捉えるのは三次元世界を二次元に還元した像であるが それを奥行き…

ほしのにんぎょひめ 蒼眠る

「お前さえ来なければ 疑われる事はなかったのに どうして酒場なんかに来た」 いきなり腕を掴まれたかと思ったら第一声がこれだった 「てめぇ…」 ぼくは何の事か分からずただ、その場で立ち尽くしていた 「俺は何もやってないんだ 何も、…そうおどけてみせた…

其の猫はただ一度限りの生を生きた

我輩は猫である。名前というものを知らない否、名前というものがあってはならないのだ或る猫はこう言うのだ「帰る場所があるというのは良いものだ、君はなんとも可哀想なもんだね日がな一日其処で暮らさずとも頃合いを見計らって戻れば家の主に歓迎されるの…

ほしのにんぎょひめ 三重点

とある痕跡を探す為ぼくは祠のある崖の上に来ていた岩に激しく波がぶつかって飛沫を上げながら寄せては返しを繰り返してる微かな塩の匂いとそして松明が焼けた燻した匂いが綯い交ぜになって吹き荒ぶ風をより一層物悲しいものとしていたのだったこの土地は日…

ほしのにんぎょひめ fight or flight

「お前か、なあ、お前だったんだろ 伝承にあった巫女っていうのは 何が望みなんだ」松明はすぐに灯されたが儀式が失敗に終わったのはこれが初めてだった外で踊りを供していた人達も気にするなと言ってはくれるもののどこか笑顔が引きつっているのだった茫然…

ほしのにんぎょひめ 紅穿つ

晒し去らせや曼珠沙華 しほたる雫に来しむ声 晒し晒せど尽きもせず 酔いも巡る宵闇の 其処彼処に帰し方来方 あれ見やるに畝掘り田掘り 死をやる涙はせんかたなく 紅拡がりて見知らぬ気色 拓けや拓け 興せや興せ しほたる雫は一時なりやと 声聞こえる 拓けや…

ほしのにんぎょひめ 泡となった少女

何事にも犠牲が必要なのだと皆は云う 祭事の取り決まりにより 巫女となってこの身を神に捧げよ、それで丸く納まるのだと 皆は云う この役目は光栄な事だと、 素晴らしい事だと羨望な眼差しを向ける人がいる一方で 毎日この神殿を訪れる人の中には 己が娘にそ…

コエラカントゥスは眠ったまま、やがて宇宙の夢をみる

コエラカントゥスは喋らない 外の世界の事を誰よりも知っているのに コエラカントゥスはいつも物憂げである しろくにごったその眼からは表情を読み取ることも難しい ただ、困った事があると皆は決まってコエラカントゥスの所へ行って 教えを請いにいくのが習…

ほしのにんぎょひめ 存在しない筈の本

或る星売りのおはなし 「この街の伝承をしっているだろうか? まあ、この街に来たばかりなら知らないだろう。こっちへ来て座ると良い。 いやあ、君はなんとも運が良いよ、驚異的な運の良さ って言ってもいいくらいだ。 まあ人魚姫の涙ってのは… お?気になる…

ほしのにんぎょひめ Schön war,das ich dir weihte

レコードに針を落としてそっと目を閉じる 瞼の裏に映る思い出を頼りにして あの時の甘美なひとときを思い起こすのだ お前は美しかった 白いワンピースを着ていたお前が優しく微笑んで私の手を取るのを ただ、見ていた そして お前はいつしか病に倒れることと…

ほしのにんぎょひめ Mädchenlied

ほんとうのさいわいを求めて、 ぼくは久しぶりに図書館を訪れていたのだった 誰もその区画に踏みいる人はいなかったのか 俄かに色褪せた本が一つとして欠けることなく棚におさまっていたのだったが この街の伝承を記したとされる、本も、ぜんぶ 無くなってい…

ほしのにんぎょひめ Vorschneller Schwur

「ひとつ、聞きたい事があるんだ。…いいかな」 「…何?」 「君はこの街に心底うんざりしているようだけど」 「…そうね」 「ここから出る気はないみたいだね、どうして?」 「わたしには、やらなきゃいけない事があって それはここでしか出来ないことなの …古…

ほしのにんぎょひめ Der Jäger   

父は何か懸念事があると決まってレコードに針を落とす 今日は、 "Der Jäger" Johannes Brahms Op. 95 を、 頑迷そのものである父が好む音楽はどこか華やかで そして楽しげである 聞く曲は父がいつも選ぶが、曲をかけるのはいつも決まって私である、 かつては…

ほしのにんぎょひめ Beim Abschied

彼女から聞かされた人魚姫の伝承によると 度重なる嵐にが原因で漁村であったこの街が存続の危機に見舞われた時に 村の長がある日これは人魚の仕業であるというお触れを出し その怒りを鎮める為に松明の灯を絶えず灯し続け時には生贄を差しだすような事もあっ…

ほしのにんぎょひめ Bei dir sind meine Gedanken

「ほんの少しだけ滞在するみたいに言ってた癖に随分長い事いるじゃない」 「…まあ、宿代がほとんどかからないというのが一番大きな理由かな、 多少の不便には慣れてるので、これくらい」 「………」 「何をそんなに不満そうな顔してるんだ?…言ってみてよ。」 …

ほしのにんぎょひめ Das Mädchen

少女は、洞窟の傍に立っていて 煌々と燃える松明が彼女の横顔をにわかに照らしているのだった。簡素な身形をしているものの、目鼻立ちが整っていてきれいだと、俺は思ったのだった。 手には乾燥した草らしきものを持っている、そこに目をやると彼女は自身の…

ほしのにんぎょひめ Das Mädchen spricht

街を転々とし始めてしばらく経ってから分かったのは一つ その街の図書館、本屋に行けばだいたいの事が分かるという事だ いつものようにこの寂れた街にはひどく不似合いにも見える図書館に足を運ぶ 人は居らず、司書は退屈そうに肘をついてどこか不満顔で椅子…

ほしのにんぎょひめ 閑話 稚拙なシナリオライター

寂れた街を再興する為に秘密裏に行われてきたあることに触れる事が出来たのは幸いだったのか、それとも不幸だったのか どちらにしてもこのどこまでも沈んだ意識が某かの期待も希望も受け付ける事はないのだろう なんとも酷い気分だ 一度触れてしまった秘密か…

ほしのにんぎょひめ 14項

「あの日、見知らぬ男が酒場に来たんだ、久しぶりに そしてあいつが掴みかかっていつもの品定めをしたあと 滞りなくあの洞窟付近の海岸にに男は誘導される筈だった 俺は鄙びた街に人を呼ぶ為の客寄せ要員として 人魚姫の格好をしてたんだ だが、席を代わる時…

ほしのにんぎょひめ 13項

「実際いるにはいるんだよ、お前みたいに、純粋に人魚姫の存在を信じて 長年それを追い求めているような人たちは …ただそういう人たちはかなり高齢で 自分から情報を提供したり、交換しに何処か集まって会話するという事がないんだ だからこそそれを利用する…

ほしのにんぎょひめ 12項

ぼくは再び酒場の扉を開く、結果はどうであっても確かめなければいけない事があるから 「そろそろ来る頃だと思っていたよ… 店は変わってしまったけど、品揃えだけはあの時のままを目指そうとしたが、そうもいかなかったらしい …やはりあの人には敵わないな。…

ほしのにんぎょひめ 11項

伝承に対する信憑性を維持するという名の下暗黙の了解として進められてきたとある風習を ぼくはその日まで知らなかった かつてのぼくは寂れた街に、そして何よりここに住むおとなたちに侮蔑的な感情を持っていて 酒は身体に悪いから、脳の発育を遅らせるから…

ほしのにんぎょひめ 10項

ぼくはまず、どちらに行けばよいのだろうと半刻ほど思索を巡らせたが 思いついたのは より危険な方は後回し、 たったそれだけのことであった なんとも情けない気がするけれども これがぼくの精一杯なのであった。 鮮烈な記憶が血肉を与えられて再び息を吹き…

ほしのにんぎょひめ 9項

酒場の雰囲気はなごやかそのもので ぼくが図書館に所蔵されているという本に興味を持つのも当然のことだった。 だが、それらしい本は見当たらないばかりか 司書の人に聞いてみてもそのような本は存在しない、の一点張りでまともに取り合ってはくれないのだっ…

ほしのにんぎょひめ 8項

「まあ要するに、泊まるところがないならここに好きなだけ居座るといいってことだ。」 「…どうして見ず知らずのぼくを?」 「どう見ても物盗りをするようなやつじゃないし、何よりも気に入った、ってことさ、他に理由なんてないな」 「ちょうど席も空いてる…

ほしのにんぎょひめ 7項

「さて、アンデルセンの人魚姫は、本来は人と会う事のない人魚姫が難破船で漂流した王子を助けた事によってある種悲劇的な最後を迎える話なわけだが ここの伝承にある人魚姫は少し違うんだ」 「最後は思いを遂げることのできなかった人魚姫が海に身を投じて…

ほしのにんぎょひめ 6項

「さて、どこから話そうか」 店主は言うなり銀盆の上に置かれたままのジッポーを手に取ると、空いた手で胸ポケットから煙草を取り出して火を点けた。 銘柄は分からない、そもそもぼくは煙草を嗜む趣味はないので検討もつかないのであった。 店主は満足そうに…

ほしのにんぎょひめ 5項

アブサンのボトルは銀の盆に載っていて隣には切り細工の装飾の施された入り口は広くそこから細長くなっていって下方が少し風船状に膨らんだ専用のグラスと小さなココット皿に入った紅茶用の角ばった砂糖の塊と、ジッポーライターと銀製のこれまた美しい装飾…

ほしのにんぎょひめ 4項

「人魚姫の伝説を聞いてこの町にやってきたのでもなくただこの酒場に来たのなら、残された理由は酒好きだって事ぐらい。となるとこれほど歓迎に値する理由はないからな、何か飲めよ。人魚姫の伝説目当てでくるやつに飽き飽きしてたところだ。」 と静かにグラ…

ほしのにんぎょひめ 3項

よく見れば酒宴のテーブルは六人掛けのテーブルの筈なのに反対側の席が全て空いている。所狭しと料理や空き瓶が並んでいるのに、どこか不自然だ。 そこに座るのはおそらく… だとしたら、成る程この町の規模のわりに酒場がこんなにも立派な店構えをしているの…

ほしのにんぎょひめ 2項

「おっ見かけない顔だな」 _______声をかけられた瞬間ぼくはしまった、と思った 旅慣れてはいるものの精悍さからは程遠い体つきのぼくはよくこう声を掛けられては人目のつかない路地へと無理やり連れて行かれそうになるのだった。あまりにもそのよう…

ほしのにんぎょひめ 1項

星の産まれる声が聞きたくてそっと始める。ポケットから瓶を、買ってきたばかりのグラスをそれぞれことりと置いてはやる気持ちを必死に抑え、深呼吸をひとつして。 海を泳ぐ人魚が何故、と一言だけつぶやいて流した涙が真珠になってそれをグラスに入れて炭酸…

Make wide view of consious,soon time is running out .

There is supposed to be wise saw which the famous Albert Einstein said . ''If the bee disappears from the surface of the earth, man would have no more than four years to live. No more bees, no more pollination, no more plants, no more man.…

硝子のようでいて、それでも

祖父が亡くなった時の話をしよう 台風の最中式は執り行われた ごうごうとうねる風の音が 死者を送る聖歌とおりなって 心の底に沈みゆく かつての祖父の面影はなく うわ言のように 呼気だけを荒くして 艱難なく生を終えた祖父 これが生きるという事ならば 生…

ウィトゲンシュタイン考察

道徳観、倫理観を言葉で語る事が出来ないのは ある特定の場合において 言葉をむやみに発する事それ自体が自分がとりうるべき行動基準と倫理観に反するものである側面もあり、超越論的に受け手とのやり取りの中に蓄積されていくものだからである みずからの論…

虚実を帯びた果はやがて腐り落ちる

何とも衝撃的なくだりから始まる彼女の独白は何処か空虚で 伏し目がちになりながら、手を組んでいる姿は悲痛な記憶から滲み出す感情に身を寄せているというよりも 誰も知らない秘密に触れてしまったかのような愉悦感とそれをひけらかすことへの背徳感に酔い…

花は匂えど

ふと花壇におりたち花々を眺めてみる 鶏頭のビロードのような少しハリのある毛羽立ちをした滑らかな手触りと独特の光沢が目に鮮やかである ペチュニアはもっときめ細やかでしっとりとした手触りをしており、少し癖のあるなんともいえない芳香を放つのである …